医療機関で処方される保湿剤のヒルドイドが、美容目的で使用されていることが問題になっています。
医療費の支払いを行う健康保険組合は、平成30年度の診療報酬改定を前にヒルドイドを保険適用外とすべきだと提言し議論を呼んでいます。
ヒルドイドの美容目的での使用が横行してしまう原因と、医療費が増大している実態をお伝えします。
ヒルドイドの美容目的使用はなぜ横行するのか?
ヒルドイドの発売元のマルホ株式会社からお知らせが公開されました。(抜粋)
一部の雑誌やインターネット上に、美容目的でのヒルドイドの使用を推奨しているような記事が掲載されています。
マルホは、このような記事を確認した都度、発行元・配信元にヒルドイドがあたかも化粧品同様のものであるかのように紹介することは控えていただくよう要請してきました。薬機法に抵触するおそれがある旨も注意喚起しています。
医師が必要に応じて処方したヒルドイドを、患者さんの自己判断で治療以外の目的で使用すると適切な効果が見込めないばかりか副作用が発現するリスクがあります。
マルホは、ヒルドイドの美容目的での使用を推奨しているような記事に対して厳しい姿勢で臨み、薬の適正使用に関する啓発に努めるなど、責任ある企業として対応していきます。
アトピー性皮膚炎などに伴う皮膚の乾燥や、やけどなどの傷痕の治療に使われている保湿剤のヒルドイドが、インターネット・ファッション雑誌・美容雑誌などのメディアや、芸能人・モデルのブログやSNS上で美容アイテムとして紹介されています。
ヒルドイドは保湿や血行促進のお薬なので美容効果がないにもかかわらず、「高級クリームと同じくらいの効果がある」「究極のアンチエイジングクリーム」と謳っている記事や、「皮膚が乾燥すると訴えれば処方箋を書いてもらえる」などと薬機法に抵触するようなススメ方をする記事も見受けられます。
こども医療費助成制度のある自治体で、こどもを受診させて自己負担なしでヒルドイドを処方してもらい、実際には母親が使っているケースも、個人ブログの記事などで確認されています。
ヒルドイドの美容目的での使用はそもそも違法なのですが、わざわざ診察を受けに来た患者に「皮膚が乾燥して痒いので薬がほしい」と症状を訴えられて、診察をした結果、実際に本人や子どもの皮膚が乾燥しているのに美容目的かどうかは確認しづらいので、医師もヒルドイドを処方せざるを得ないのではないでしょうか?
ヒルドイドの医療費増大問題
ヒルドイドの価格は25グラム入りのチューブ1本で約590円なので、自己負担割合が3割の人は診察料などを除けば180円ほどで入手でき、残りの7割は健康保険が負担してくれます。
健康保険組合連合会はメディアやSNSなどの動向から、美容に関心の高い女性が皮膚科を受診して肌が乾燥すると訴え、後発品を含むヒルドイドを化粧品代わりに処方してもらっている可能性が高いと考え、レセプト(診療報酬明細書)のデータを調査したところ、医療費総額は93億円にものぼることが分かりました。
「自分さえ安く購入(タダで入手)できればラッキー♪」という考え方をする人達の合計が93億円と考えると恐ろしいことですね。
ヒルドイドが保険適用外になる?
ヒルドイドと同じ成分のヘパリンZクリーム・HPクリーム・ヘパリペアなどはドラッグストアで処方箋なしで購入できます。
美容目的でヒルドイドを使用する人が増えたことが医療費を増大させる原因になっているので、保険の対象から外すべきだという指摘が出るのは当然のことだと思います。
ですが、ヒルドイドのみの処方を保険適用から外されることで迷惑を被るのは病気でヒルドイドを必要としている患者さんです。アトピー性皮膚炎などの皮膚の病気による乾燥を防ぐために保湿剤のヒルドイドのみを処方される場合も少なくないからです。
私の姑の場合は、大学病院のリウマチ内科で内服薬を処方してもらっていますが、老人性皮膚掻痒症で全身が痒く、乾燥すると皮膚が鱗のようにパラパラと剥がれてしまうので、健康保険の上限ぎりぎりの量のヒルドイドのみを近所の皮膚科で処方してもらっています。
美容目的でヒルドイドを不正に使用する「自分勝手」な人達のせいで、病気で苦しんでいる患者のヒルドイドのみの処方に健康保険が利かなくなることは納得できません。
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