何らかの理由で婚姻生活が破綻して、例えば妻が小さな子どもを連れて家を出た場合、夫から金銭を受け取らなければ、生活ができなくなるので、夫に婚姻費用分担義務が生じます。
話し合いで夫が婚姻費用を支払ってくれない場合は、別居中の生活を維持するために必要な、居住費・生活費・養育費などの婚姻費用を、妻が夫に請求する権利があります。
婚姻費用分担の請求方法と申立書の書き方、支払い義務はいつまで続くのかについてまとめました。
婚姻費用分担の請求方法
夫婦には、お互いの生活レベルが等しくなるように助け合う生活保持義務があります。
仲の良いご夫婦は心配しなくても良いことなのですが、同居をしていても収入のある方が生活費を渡さなかったり、夫婦のどちらかが家を出てしまい別居状態にあるなど、円満な婚姻生活が破綻してしまった時に婚姻費用が問題になります。
妻が家を出て行き、生活を共にしていないからといって、夫が妻に生活費を渡さないことは法律的にも許されませんが、婚姻費用分担請求ができるのは、別居はしていても離婚はしていないというように、あくまでも婚姻関係が継続している場合のみです。
婚姻費用は夫の年収だけではなく妻の年収によって金額が変わるので、収入のない専業主婦でければ夫が婚姻費用を支払う義務がありますが、夫よりも妻の収入が多ければ妻から夫に婚姻費用を支払うことになり、子どものいない共働き夫婦で収入が同額であれば婚姻費用はゼロになります。
婚姻費用の金額は話し合いで自由に決める事ができますが、東京・大阪の裁判官が作成した養育費・婚姻費用算定表が参考になります。
婚姻費用分担請求の調停の流れ
養育費・婚姻費用算定表を参考に、夫婦間で話し合って双方が納得した金額を授受できれば良いのですが、別居を決意するほどの理由が存在するのですから、それはなかなか難しいことだと思います。
夫婦間での合意が得られない場合は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所へ調停の申立てをすることができます。
婚姻費用分担請求申立てに必要な書類
・婚姻費用分担請求調停の申立書
・夫と妻、それぞれの戸籍謄本
・源泉徴収票、確定申告書、給与明細等の申立人の収入が分かる資料
・入手可能であれば相手方の収入が分かる資料
婚姻費用分担請求申立てに必要な費用
弁護士に依頼する場合は弁護料が別途必要となりますが、婚姻費用分担請求申立ては簡単です。
ご自身で婚姻費用分担請求を行う場合の費用は、郵便局やコンビニで購入できる1,200円の収入印紙と、家庭裁判所によって額面が異なる場合がありますが、家庭裁判所から請求者あてに書類を郵送するための800円の切手代の合計2,000円です。
調停を経験したことのある方はあまり多くはないと思うので、婚姻費用分担請求調停の一般的な流れを記載します。
・調停期日が記載された呼出状の到着
婚姻費用分担請求を申し立ててから約2週間で、申立人と相手方の住所へ調停の期日が記載された呼出状が届きます。調停の期日は申立てから約1ヶ月後となっています。
・第1回目の調停
呼出状に記載された調停日に家庭裁判所へ到着すると、夫婦別々の待合室に案内され、時間になったら調停室で話し合いが行われるので、夫婦がお互いに顔を合わせる心配はありません。
基本的には申立人が先に調停室へと呼び出されます。
調停室には、裁判官と男女1名ずつの調停委員がおり調停の進行についての説明が行われます。
説明後は裁判官は席を外すので、基本的には調停委員2名と申立人でやり取りをすることになります。
婚姻費用分担請求を申し立てた経緯などについて質問をされますが、所要時間は概ね30分ほどなので、調停委員に簡潔に伝えることができるように、申し立ての理由・申し立てるに至った事実・ご自身がどうしたいのかを、前もって整理して箇条書きにしておくことをお勧めします。
申立人が調停委員との話を終えると、次は相手方が調停室へと呼び出され、申立人と同様に話し合いを行います。
話し合いが終わると、申立人・相手方の順番で再び調停室へと呼び出され、今度は、調停委員から夫は妻の、妻は夫の言い分を聞かされ、婚姻費用算定表を参考に、婚姻費用の金額についてそれぞれが30分ほど話し合います。
特に問題がなければ、1回目の調停で終了する場合もありますが、論点が多ければ2回目・3回目と調停を続けることになります。
・調停が成立した場合
調停の結果、両者が婚姻費用の金額に合意すれば、調停終了後1~2週間で、申立人と相手方の住所へ調停調書が郵送されてきます。
調停調書は、相手が定められた婚姻費用を支払わない場合でも、強制執行によって婚姻費用が保証される重要な書類なので、厳重に管理をしましょう!
・調停が成立しなかった場合
調停の結果、両者あるいは一方が婚姻費用の金額に納得できず調停が成立しなかった場合は、自動的に審判に移行し、裁判所が調停で話し合われた内容や資料を元に総合的に判断して妥当な金額が示されるケースがほとんどです。
この金額にも納得ができないということであれば裁判を起こすことになります。
婚姻費用分担請求をするといつまでもらえるの?
婚姻費用を受け取れる期間は、請求手続きをしてから離婚するまで、あるいは再度同居を開始するまで続きます。
婚姻費用を手続き前に遡って請求することは基本的にはできないので、別居後に相手に生活費を支払ってもらえない場合は、早急に婚姻費用分担請求を行うことを強くお勧めします!
婚姻費用分担請求が認められないケース
冒頭のケースのように、妻が小さな子どもを連れて家を出た場合は外で働くことはままならないので、夫から別居中の婚姻費用を受け取らなければ生活ができなくなってしまいますが、状況によっては婚姻費用の受け取りが認められないケースもあります。
常識的に考えれば当然のことですが、婚姻費用分担の請求を行う申立人本人が、婚姻関係を破綻させて別居に至る原因を作った場合です。
このような場合でも、子どもの養育費に関しては、両親が養育義務を負っているため、別居や婚姻関係が破綻した理由は問われずに認められます。
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