私がコールセンターのオペレーターの仕事をしていたときに、私のご案内の言葉尻を捕らえては言いがかりをつけて、長時間にわたってお説教をする粘着質なクレーマーの対応を毎日のようにしていた時期がありました。
だんだんと、電話を受けること自体が怖くなってしまい、他のお客様からの簡単な問い合わせに対しても満足にご案内ができなくなっていきました。
「ストレスかもしれないけど、認知症かもしれない!」と不安になり、物忘れ外来を受診しました。
認知症検査の種類と方法についてと、ご自身ではなく、ご家族を病院に連れて行く際の注意点についてまとめました。
認知症検査の種類
話が長くなりますが、私がそのクレーマーの対応をするのは、最初のうちは週に2~3回(運が良ければ0~1回)くらいで済んでいました。
恐らく、私が他のオペレーターのように上手くあしらう事ができないので、面白くて指名してくるのだと思いますが、毎日「〇〇(私の名前)さん出して!」と電話をかけてくるのですが、そもそもコールセンターは指名制ではないので電話を取ったオペレーターが対応してくれていました。
そのオペレーターがミスをしたわけでもないのにネチネチと身に覚えのないことで1時間近くお説教をされるので、辟易してSV(上司)に電話を代わってもらったところ、そのベテランSVがクレーマーのあまりの陰湿さに腹を立てて「営業妨害です!切ります!」と言って電話を切ってしまったことがありました!
その直後に会社の管理部に「電話を一方的に切られた!」とクレームの電話が入ったので、このクレーマーは以前この会社で働いていて退職した人物ではないかと推測することができました。
その後もそのクレーマーからの電話は毎日続き、いつの間にか私のシフトやお昼休憩の時間まで把握されてしまい、高い確率で私が対応しなければならなくなってしまったのです。
こうなると私の中ではクレーマーではなくストーカーです。電話が鳴るだけでビクッとしてしまい、電話に出ること自体が怖くなっていきました。
他のお客様からの問い合わせに対するご案内をするときに、話の組み立てができなくなり、適切な言葉が出なくなり、自分の名前が名乗れなくなり、パソコンでご案内内容の検索ができなくなり・・・「できない」という自覚はあるので焦ってしまい、動機・息切れ・異常発汗・声や手の震えで頭の中が真っ白になってしまうことが頻繁に起こりました。
電話対応をしていないときでも、自分のシフト表を確認して注意深く時計を見ても休憩時間が分からなくなり、その日に一度は座った席が休憩時間を挟むと思い出せなくなってしまったり、自分のロッカーの鍵の番号を見てもロッカーの場所が探せなくなったり、極めつけはドアにテプラで貼ってある「押す」という文字を見ても、一生懸命、引っ張って「開かない!開かない!」とパニックに陥ってしまったり・・・といったことが度重なったので、休みの日に物忘れ外来を受診しました。
初めて訪れたこのクリニックは、物忘れ外来が専門ということではないのですが、老年科という科があって待合室の1/3は高齢の患者さんとその付き添いの方が座っていました。
私の名前が呼ばれ、診察室に入り、院長先生(女医さん)に症状を話すと、「電話対応のお仕事はただでさえストレスがかかりますからね。認知症ではないと思いますが、異常がないことが分かれば安心材料になりますから、検査を一通りしてみましょうね」と言われ、長谷川式認知症スケールという9つの設問に答える検査(テスト)をしてもらいました。
私は、緊張からか5問目の100から7を順番に引いていく計算の途中で躓いてしまい、8問目の5つ並べた品物の名前を覚えてから隠すテストでは、1つ目に隠された品物の名前はすぐに答えることができたのですが、2つ目に隠されたの品物の名前を答えるのに時間がかかってしまい「あぁ、やっぱり私は認知症かもしれない!」と悲しくなって涙ぐんでしまいました。
再び診察室に呼ばれて、院長先生に「答えに詰まることなんて誰にでもあることですから、全然、大丈夫ですよ!」と慰められながら、念のためにということで、設備の整ったA総合病院で、脳を水平に輪切り状態に撮影して脳の形を見ることで、脳が萎縮していないかどうかを確認することができるMRI検査を受けるようにと紹介状を書いてもらいました。
認知症の検査方法
紹介された総合病院で、MRI(磁気共鳴画像診断)検査を受けて、後日、検査結果の説明を聞くために、総合病院を紹介してくれたクリニックを受診しました。
その結果、「MRIの性能が良すぎて過剰に結果に反映してしまう可能性も考えられるので、あまり心配する必要はありませんが、パーキンソン病かレビー小体型認知症の疑いがあります。」「MRIの機械の性能が良いのでA総合病院に紹介状を書きましたが、パーキンソン病かレビー小体型認知症の疑いがあるとなると、日本認知症学会の認定専門医のB総合病院のT先生宛に紹介状を書きますので、心筋シンチグラフィー検査と脳血流シンチグラフィー検査を受けて、総合的に判断してもらって下さい」と言われ、まな板の上の鯉の心境になり、B総合病院のT先生に一度診察してもらってから、後日2つの検査を受けてきました。
心筋シンチグラフィー検査
心筋シンチグラフィー検査は、血液を画像化する検査薬を静脈に注射したあと、心臓に供給される検査薬の集まり方をガンマカメラという撮像装置で撮影をして診断を行う検査です。
安静時には心臓に検査薬が集まったのに、負荷をかけたときに心臓に検査薬が十分集まらない場合は、心臓は負荷に耐えられない状況にあると判断され、安静時と負荷をかけたとき両方とも検査薬の集まりが悪い場合は心筋梗塞の可能性が疑われます。
なぜ、脳の病気の検査に心臓機能の検査を行うのかの説明は受けましたが、難しすぎて未だによく分からないままなのですが、診断材料になるとのことでこの検査を受けました。
検査の結果は「安静時と負荷をかけたとき、ともに検査薬がきちんと心臓に集まったのでこの検査に関しては異常なしです」とのことで、初診のときと同様に、口頭で答える一般常識のテストや、記憶力のテスト、数に関するテストのほかに、紙に書く図形のテストや、向かい合ってT先生と同じ動きをする運動神経(?)のテストなどを受けて帰宅しました。
脳血流シンチグラフィー検査
脳血流シンチグラフィー検査は、ごく微量の放射性物質のラジオアイソトープを含む薬を静脈から注射して、脳の形態と働きを調べる検査です。
脳内の血流量や代謝機能の情報が得られるので、血流量が少なくなっている場所を特定して、認知症の疑いの有無や原因となる疾患まで予測することも可能な検査です。
この検査の結果、頭頂葉の後ろ側の右脳と左脳の境目付近で脳血流の低下が認められたのですが、この場所はパーキンソン病やレビー小体型認知症やほかの認知症で血流が低下する場所ではないとのことで、「異常なしとは言い切れませんが、しばらく様子を見ましょう」ということになりました。
その後、いつものように、たくさんのテストを受けて、疲れ切って帰宅しました。
この検査を受けてから、もうすぐ1年が経ちますが、今のところひどい物忘れの自覚症状はありませんし、時々会う子ども達にも特に指摘されないので大丈夫なようです。
コールセンターを思い切って辞めたことが良かったのかもしれません。
認知症検査にご家族を連れて行く際の注意点とは?
もう亡くなりましたが、私の両親は認知症でした。
先に父が発症して、姉が父を病院に連れて行ってくれたのですが、もともと大人しい性格だったのと、かなり症状が進んでいたために、嫌がるそぶりもなく診察を受けさせることができました。
数年後に発症した母は、かなり気性の激しい性格でしたが、父の困った行動を見ていたので、姉が「お薬をちゃんと飲めば大丈夫だから、病院に行こうね」と優しく諭したところ、素直に診察や検査を受けさせることができました。
私の知人も、認知症を疑ってお母様を病院に連れて行ったのですが、話し合いというか、お母様を納得させない状態で受診したため、毎回毎回、受診するのを嫌がって、暴れて大変だという話を聞きました。
言葉は悪いですが、ご本人にとっては「騙された」という思いが強いのではないでしょうか?
認知症が疑われる方の性格もありますし、難しいことなのかもしれませんが、可能であれば、ご本人を納得させた上で病院に連れて行くことがベストだと私は考えています。
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