
認知症は物忘れ外来を受診しましょう
テレビで見た俳優さんの名前がすぐに思い出せなかったり、2階に用事があったのに階段を上りきった途端、何をするために階段を上ったのかを忘れてしまうことはありませんか?
これは、単なる物忘れなので、しばらくすると「ああ!〇〇という俳優さんだった!」「〇〇をするために2階に上がったのだった!」と思い出します。
物忘れではなく、認知症が疑わしい場合は早めに物忘れ外来を受診しましょう!
認知症と物忘れの違いとは?
認知症と物忘れは似ているようで違います。
物忘れは、判断力が低下しているわけではなく、体験したことの一部を一時的に忘れていることが多いので、ヒントがあれば思い出せますし、日常生活には何ら支障はなく、自分が何かを忘れてしまっていることを自覚しています。
一方、認知症は、判断力が低下していて、例えば朝ごはんを食べたこと自体を忘れてしまっていて、家族に「目玉焼き、美味しかったわよね?!」などとヒントを言ってもらっても思い出すことができず、朝ごはんを何度も催促するなど、日常生活に支障をきたし、自分が何かを忘れてしまっているという自覚がありません。
私の父は、もともと無口な人でしたが、70歳を過ぎて胃癌で胃の全摘手術を受けてからは体力が落ちたせいか、一日中、座椅子に座ってテレビを見ていることが多くなりました。
胃の全摘手術を受けたあとは食事を一口摂るのも大変で、大好きだったお酒も受け付けない体になってしまっていたのに、手術から5年が経過したこの頃から何故か日本酒をほんの少量ですが飲むようになっていました。
数少ない会話の中でも、徐々に話が噛み合わなくなり始め、こちらから話しかければ返事はしますが、自分から家族に話しかけることはほとんどなくなっていきました。
そんなとき、車で3時間ほどの距離の地域に住んでいる、父のお兄さんが亡くなったとの連絡があり、姉が父と母を車で病院に連れて行ってくれたのですが、途中のドライブインで食事を摂って車に戻ってきたときに、父が「さあ!帰ろう!」と言い出したので、姉が「伯父さんが亡くなったから病院に向かっているんだよ」を話すと、初めて聞く話のように驚き、病院に到着するまでこのやりとりが何度も続いたそうです。
私は姑の介護を夫の妹に頼んでから、翌日、伯父の家に到着して、そこで半年振りに自分の両親と会うことになるのですが、父は一人で立っていられないほどやせ細ってフラフラしていて、呂律が回っていませんでした。
伯父の葬儀のために集まった親戚の人たちにも「行動がおかしい」と指摘を受けたのですが、全員が疑った父の病名は「アルコール依存症」だったのです。
伯父の葬儀からの帰りの車の中で父は失禁し、翌日は、3ドア冷蔵庫の一番下の野菜室をトイレと間違えて【大】をしてしまったため、その翌日に、姉は、アルコール依存症専門外来に父を連れて行ってくれました。
今までの父の行動などを医師に伝えてテストをしてもらったところ、アルコール依存症ではなく、アルツハイマー型依存症の確率が極めて高いので、MRIや脳血流検査などを受けることをすすめられました。
この病院は物忘れ外来にも力を入れている病院だったため、受診が二度手間にならずに済んで助かりました。
認知症のセルフチェックの内容は?
この病院で父は長谷川式認知症スケールという検査(テスト)をしてもらいました。
1問目:あなたの歳はいくつですか?
2問目:今日は何年の何月何日ですか? 何曜日ですか?
3問目:私たちが今いるところはどこですか?
※正答がないときは5秒おいて「家ですか?病院ですか?施設ですか?」とヒントを与える。
4問目:これから言う3つの言葉を言ってみて下さい。あとでまた聞くので覚えておいて下さい。
※以下の系列のいずれか1つで行う
系列1:a) 桜 b) 猫 c) 電車
系列2:a) 梅 b) 犬 c) 自動車
5問目:100から7を順番に引いてください。
a) 100―7は?
b) それから7を引くと?
※出た答えからどんどん7を引いていく。
6問目:これから言う数字を逆から言ってください。(aに正解したときのみbも行う)
a) 6―8―2
b) 3―5―2―9
7問目:問4の3つの言葉をもう一度言ってみてください。
※正答が出なかった言葉にはヒントを与える。
8問目:これから5つの品物を見せてから隠しますので何があったか答えて下さい。
※1つずつ品物の名前を言いながら並べて覚えさせた後に隠す。時計・くし・はさみ・鍵・ペンなど必ず関係のない品物を使う。
9問目:知っている野菜の名前をできるだけ多く答えて下さい。
※答えた野菜の名前を記入する。途中で言葉に詰まり、約10秒待ってもでない場合にはそこで打ち切る。
1~8のそれぞれの設問に解答できた数によって点数をつけて診断が行われます。
父は物忘れ外来のある病院でテストを受けたのですが、ご自宅でこのセルフチェックをすることもできます。
長谷川式認知症スケールを試してみたい方はこちらからどうぞ。
認知症の疑いがある場合は物忘れ外来を受診しましょう
父が病院で長谷川式認知症スケールを受けたとき、8問目の品物を隠すテストの中にスプーンがあり、一旦隠したあと父が思い出した品物にそのスプーンも含まれていたのですが、父はスプーンのことを方言で「しゃもじ」と呼んでいたため、不正解になりそうだったと、今では笑い話になっていますが、当時は笑う余裕などありませんでした。
MRIや脳血流検査の結果、アルツハイマー型依存症でもあるし、脳血管性認知症の疑いもあるとのことでした。
お酒を再開したのも、胃を全摘したこと自体を忘れてしまったからではないかと医師に指摘されました。
処方されたお薬をきちんと飲んでしばらくすると、お酒を隠すと激怒していたのに、興味がなくなったのかすんなりとお酒をやめることができたおかげで、食欲も出てきて少しふっくらしてきましたが、失禁や話が噛み合わないのは相変らずでした。
ほどなく徘徊の症状が見られるようになってきました。
母が買い物に出掛けたことを忘れてしまい、母を探しに家を出るのですが、体力がないのであまり遠くまで行くことができず、自分のいる場所が分からなくなりウロウロしているうちに、近くの老人ホームの職員の方に保護していただく常連さんとなって行きました。
2年後、近所に住んでいた母方の叔父さんが亡くなり、叔父さんと仲良しだった父はそのことを知らされたときからずっと震えていたそうです。
翌日も父の震えが止まらないと母から連絡を受けた姉が実家に向かってくれたのですが、脳幹動脈梗塞で帰らぬ人となってしまいました。
父の震えの原因が、叔父の死のショックを受けたためのものと素人判断してしまったのが良くなかったのかも知れません。
さいごに
父が亡くなってから母も認知症を発症することになるのですが、このときはまだ母の頭はしっかりしていて、認知症の父に冷たい態度を取ったことを反省していました。
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